前回の記事では、経営理念とビジョンについて解説しました。
今回の記事では、経営活動を構成する要素のうち、経営戦略と経営計画について解説します。
企業を取り巻く外部環境は刻一刻と変化します。例えば、競合他社が新製品をローンチしたり、新規参入者が登場することがあります。顧客のし好やライフスタイルも変化します。VRやAIなど新技術はより高度化します。政府が新たな法律を制定したり、法改正も行われます。
このような外部環境の変化の中で、企業はそれに適応しながらビジョンを達成する必要があります。戦略的にビジョンを達成するため、経営戦略や経営計画が作成されます。
Guide Line
1. 経営戦略と経営計画
企業は、外部環境の変化に適応しながらビジョンを達成する必要があります。外部環境は刻一刻と変化するため、その打ち手を戦略的に考えておく必要があります。また、競合他社も同様に、常に外部環境への変化に対応しようと打ち手を講じます。そのため、競合他社よりも優位なポジションを獲得していく戦略を定めることが必要となります。この優位な位置取りを競争優位の獲得といいます。
経営戦略は外部環境の変化に適応しながらビジョンを達成することを目的として作成します。そして、この目的をさらに具体化したものが経営計画です。次の項目では、まず、経営戦略について確認しましょう。
2. 経営戦略の3つの階層
企業は、通常、事業や部門に枝分かれしていく階層構造になっています。そのため、経営戦略もこれに合わせて階層構造とする必要があります。具体的には、会社全体の単位、事業ごとの単位、部門ごとの単位と、それぞれの単位ごとに戦略策定することが有効です。
1. 企業戦略(成長戦略):企業全体を対象とした戦略
一番大きな単位は、企業戦略です。企業戦略は会社全体を対象とした戦略です。
企業は複数の事業を営むことも多くありますが、会社全体で何の事業を行って、それをどのように組み合わせると大きな効果が得られるかということを策定するのがこの企業戦略となります。企業として成長していくことにつながる戦略ですので、成長戦略とも呼ばれます。
2. 事業戦略(競争戦略):個別の事業ごとの戦略
企業戦略の下の階層となるのが事業戦略です。事業ごとを対象とした戦略です。
他社との競合の問題は、事業単位で具体化されます。そのため、事業ごとに競争優位をどう獲得していくのか考える必要があります。そこで策定されるのが、この事業戦略となります。他社との競争に対する戦略ですので、競争戦略とも呼ばれます。
3. 機能戦略:事業内の機能ごとの戦略
事業戦略の下の階層となるのが機能戦略です。製造部門や営業部門など、個別の部門ごとを対象とした戦略です。
一つの事業は、細分化された部門単位で機能しています。事業単位で策定した事業戦略を各部門に落とし込むため、機能ごとに戦略や方針を定めるのがこの機能戦略となります。機能戦略を定めることで、各部門に所属する人に共通の認識や目標が生まれることとなります。
以上が経営戦略となります。戦略を定めることで方針や目標が具体化されてきますが、一方で、大局的であり具体的な行動指針が必要になります。そこで登場するのが次に説明する経営計画です。
3. 経営計画の策定とその見直し
1. 経営計画の策定
経営戦略をより具体化したものが経営計画となります。経営計画では、期限や担当者、実施内容を具体的に定めることとなります。戦略を構築して計画を定めても、それが行わなければまったく意味がありません。また、効果ある時期に行われなければ、時間や費用が無駄になってしまいます。そのため、責任の所在を明確化する役割も含みます。
経営計画は、計画が完了する期間に応じて下記の3つに分けられます。
短期経営計画(1年間で実施されるもの)
中期経営計画(3~5年程度で実施されるもの)
長期経営計画(5年以上の時間をかけて実施されるもの)
この3つは、すべてを定めなければならないものではなく、事業や部門の性質に応じて必要なものを定めるものとなります。また、計画完了までの期間が長いほど予測が難しい事態が生じます。そのため、長期にわたる経営計画は、細かく定めるというよりは方向づけの意味合いで定めることがいいでしょう。
2. 経営計画の修正方法
経営計画は、いったん策定しても、想定外の事態が発生したり、実施可能であってもその効果がないことが判明したり、当初の計画で見込んだ結果が生まれない見込みが生じます。特に、計画完了が長期にわたるほど、当初の計画通りとはいかない場合が増えてきます。
そのような場合には、当初の計画にこだわらず、計画を修正することも必要です。
計画の修正方法には、主に次の2つの方法があります。
ローリングプラン:一定期間ごとに計画修正することを決めておく方法
コンティンジェンシープラン:不測事態に備えた計画を予め策定しておく方法
ローリングプランは計画を定期的に見直す方法であり、通常、日々の業務の中でもPDCAを回すのと同様に用いられる方法です。修正は、計画の長さに応じて3か月ごと、年度末ごと、などと決めて見直します。
コンティンジェンシープランは、不測事態の発生に備えてあらかじめ立てておく計画です。不測事態が生じた場合に、その被害を最小化することをその目的とします。例えば、ハザードマップ上の洪水浸水想定区域に会社がある場合に、浸水リスクに対してどう備えておくか計画しておくことです。
コンティンジェンシープランは、不測事態が発生しなければ用いられないものとなります。しかし、リスクに対して備えておかなければ対処できなくなりますので、どのようなリスクがあるか常にアンテナを張っておきましょう。
以上が経営計画となります。
経営計画はせっかく策定しても、実行されなければ意味がありません。実行されない原因としては、データ分析に偏ってしまったり、現場の実情と乖離していて不信感が芽生えていることが挙げられます。計画するにあたっては、経営陣からの一方的な視点で定めるのではなく、現場の意見を取り入れた実現可能な計画となるように注意しましょう。
以上、経営戦略と経営計画について解説しました。外部環境にさらされる中でいかに競争優位を築いていくか、戦略的に構築するとともに、より具体化するために経営計画を定めていくものとなります。そして何よりも重要なのは、定めた計画が実行されることです。計画を実行する現場サイドとの意思疎通をしっかりと図り、実現可能な計画を策定しましょう。また、分析が詳細になりすぎて計画を定めるのに時間がかかり、環境が変化してしまっては意味がありません。実行しながら検証して微調整を加え、計画を前に進めることが大切です。
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