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  • 執筆者の写真Kudo

労災保険の療養(補償)給付:知っておきたい基本と利用方法

更新日:2023年8月13日

療養補償給付とは、業務を原因とするケガや病気の治療について労災保険から行われる給付のことです。また、療養給付とは、通勤途上にケガをして通院等した場合にされる保険給付です。いずれの場合も治療費や入院代、薬代、などの治療のために必要な費用が保険給付されます。


この記事では、労災保険の給付内容のうち、療養(補償)給付について掘り下げて解説します。建設業など業種によっては仕事中のケガが多いものもありますが、あらかじめ確認いただき、お役に立てれば幸いです。


労災保険の療養(補償)給付

Guide Line

 

1. 労災保険の療養(補償)給付の補償範囲

労災によるケガや病気の療養の補償範囲としては、主に、以下のものが挙げられます。


補償される費用の例

・ 治療費(診察費等)や薬代

・ 入院費用、手術費用

・ 入院や自宅療養(訪問看護事業者が行うもの)にかかる看護費

・ 柔道整復師やはり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の施術費

・ 移送費 ※被災場所や自宅から病院等へ、また、病院等から他の病院等へ移送の必要性があるとき

・ 入院や通院のための交通費


通院費について:

被災労働者の居住地または勤務先から、原則、片道2km以上の通院であって、次の①から③のいずれかに該当する場合に支給対象となりえます。


① 同一市町村内の適切な医療機関(注2)へ通院したとき。

② 同一市町村内に適切な医療機関がなく、隣接する市町村内の医療機関へ通院したとき

③ 同一市町村内にも隣接する市町村内にも適切な医療機関がなく、市町村を超えた最寄りの医療機関へ通院したとき。


こうしてみると、労災によるケガや病気の治療のために必要な費用のほとんどは補償の対象となりえます。一方で、必要性のない個室代や差額ベッド代、催眠療法など特殊な治療方法、必要のない付添看護など、原則として補償対象とならない費用もあることに注意が必要です。なお、ケガや病気の原因が労働災害として認定されない場合は、当然ですが労災保険の保険給付はされません。この場合は健康保険の補償対象となりえます。

 

2. 労災指定病院を使うべき?

労災保険の療養(補償)給付は、治療費等、必要とされる費用のほとんどがカバーされる手厚い保険ですが、手続きについては注意が必要です。手続きが簡単な場合とそうでない場合があります。労災指定病院を使うことで、手続きが比較的簡単に済みます。


① 労災指定病院および指定医療機関を使用する場合

労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等を使用して療養(補償)給付を受けることを療養の給付といいます。療養の給付は、無料で治療や薬剤の支給などを受けられます(現物給付といいます)。


② 労災指定病院および指定医療機関以外の病院や薬局を使用する場合

指定医療機関等以外の 医療機関や薬局等で療養を受け、療養(補償)給付を受けることを療養の費用の支給といいます。療養の費用の支給は、その療養にかかった費用を支給する現金給付です。つまり、かかった実費をひとまず負担する必要があります。そして、健康保険は使えないので全額自己負担となります。


この部分だけでも、①のほうが、ケガ等した人からみてもメリットがあることがわかると思います。近くに労災病院や指定医療機関等がないなどやむを得ない理由がない限りは、労災病院や指定医療機関を利用しましょう。なお、交通費など病院外の費用やはり治療など労災病院外での費用については、いったんは自己負担で支払うことが必要です。


費用の自己負担の面から労災病院を使うメリットをあげましたが、手続的にも①の方が簡単に済みます。指定の様式(様式第5号もしくは第16号の3)に事業主の証明をもらい、治療を受けている労災病院等に提出するだけです。②のほうでは労基署等も経由する必要があるので、手続的には比較的に煩雑となります。

※手続きで必要な様式は厚生労働省のHPでダウンロードできます。

リンク:厚生労働省主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)


 

3. 給付はいつまで行われる?

労災保険の療養(補償)給付を受けられる期間は、病気やケガが治ゆするまで受けることができます。療養に必要な期間、必要な治療の治療費等を受給できるため、とても手厚い補償内容となっています。


治ゆという単語ですが、「治る」という意味はもちろんですが、「これ以上治療しても症状が改善しない」という意味(症状固定)も含んでいます。症状固定してもなお障害が残れば、障害(補償)給付の対象となりえます。


なお、時効にも注意する必要があります。療養の費用の支給(労災病院等以外の病院で治療を受ける場合)では、いったん治療費等を自己負担し、所定様式を労基署に提出して、後で自己負担分の還付を請求する手続きでした。請求せず2年間経過すると、時効により請求権が消滅し、治療費等の還付が受けられなくなるため気をつけましょう。これに対して、療養の給付(労災病院等で治療を受ける)の場合は、原則、現物給付として治療費の自己負担がないため、時効は問題になりません。


 

以上が療養(補償)給付となります。補償範囲や手続き、補償等の期限についてみてきました。簡単に下記にまとめます。

・ 療養(補償)給付は治療費等の必要な費用が給付される

・ 労災病院や指定病院で治療を受ければ、手続きが楽

・ 治ゆ(症状固定)するまで支給される

労働者にとって手厚い補償となっていますので、万が一労災に遭って治療を受ける際には、活用しましょう。


オープンリソース・アルケミストは、お客様の経営実態に合わせた提案を行っております。リスク管理や労災対策に関する疑問や改善案について、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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