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執筆者の写真Kudo

労災保険の傷病(補償)年金:ケガや病気が回復しない場合の安心の制度

更新日:2023年8月16日

労災でケガや病気に遭った場合、まず、療養(補償)給付を使い治療を受けることになります。ケガの程度や病気の症状によっては働けずに休業することもあります。労災による休業中に勤務先から賃金の支給を受けることができなければ、休業(補償)給付および休業特別支給金(あわせて、給付基礎日額の80% × 休業日数)を利用することができますが、思いがけず休業が長期にわたり、経済的負担が大きくなることもあります。そのため、労災保険では、休業が長期にわたるときのことを考慮して、傷病(補償)年金の制度があります。


この記事では、労災保険の傷病(補償)年金の制度について、給付の要件やその内容を解説します。


労災保険の傷病(補償)年金

Guide Line


 

1. 労災保険の傷病(補償年金)給付の要件:3つの要件


労災保険の傷害(補償)年金が支給されるためには、以下の3つの要件が該当する必要があります。


・労災による療養開始後1年6か月が経過していること

・ケガや病気が未だに治ゆしていないこと

・ケガや病気による障害の程度が傷病等級表の規定に合致すること


※傷病等級表については、下記のリンクをご参照ください。

リンク:厚生労働省HP内 労災補償・労働保険徴収関係のうち傷病等級にかかるページ


言い換えると、傷害(補償)年金は、労災による療養開始後、1年6か月が経過し、なおも治癒しない一定の障害状態にある場合に支給されます。


また、ケガや病気による休業中で休業(補償)給付を受け取っている場合、休業(補償)給付の代わりに傷病(補償)年金が支給されます。そのため、休業(補償)給付の併用はできなくなります。※ただし、引き続き療養(補償)給付は受け取ることができます。

 

2. 給付内容


① 具体的な支給額:月給30万円(ボーナスなし)と仮定した場合

傷病等級に応じて、傷病(補償)年金、傷病特別支給金、傷病特別年金が支給されます。

月給30万円の場合、給付基礎日額は約10,000円、算定基礎日額は約2,000円なので、第1級(両目が失明など)に該当した場合は、下記の支給額となります。


・傷病(補償)年金 = 313万円(年額)

・傷病特別支給金  = 114万円(一時金のため初年度のみ)

・傷病特別年金   = 626,000円(年額)


初年度合計 = 約490万円

※2年目以降は約375万円


② 傷病等級ごとの支給額:傷病等級に応じて支給額が変わる

傷病等級ごとの年金額等は下表のとおりです。

傷病等級

傷病(補償)年金

傷病特別支給金

(一時金)

傷病特別年金

第1級

給付基礎日額の313日分

114万円

算定基礎日額の313日分

第2級

給付基礎日額の277日分

107万円

算定基礎日額の277日分

第3級

給付基礎日額の245日分

100万円

算定基礎日額の245日分

 

3. 請求方法や支給月について


① 請求方法について:労働基準監督署に書類提出

傷病(補償)年金は、労働基準監督署の職権によって、支給もしくは不支給が決定されます。そのため、請求は必要ありません。しかし、傷病が治ゆしていないことを通知するため、所定の様式にて届け出る必要があります。


② 支給時期について:偶数月に2か月分支給

支払のタイミングについてですが、支給決定された翌月分から支給開始となります。

毎年、2月、4月、6月、8月、10月、12月が支給月(いずれも偶数月)であり、2か月分まとめて支給されます。

 

4. 社会復帰促進事業について

傷病(補償)年金の受給者等には、社会復帰促進事業として、以下の支援があります。


① 義肢等補装具購入(修理)に要した費用の支給

傷病(補償)等年金の受給者で一定の欠損障害または機能障害が残った方に対し、義肢や車いすの購入や修理に要した費用が支給されます。


② 労災就学等援護費

同居している子が学校に在学中、またはこの子を就労のために保育所などに預け ている場合などに支給される支援です。


③ 長期家族介護者援護金

傷病等級第1または2級の傷病(補償)等年金を10年以上受給していた方が業務外の原因で死亡した場合、一定の要件を満たすご遺族の方に、長期家族介護者援護金を支給されます。

 

休業が長期間続いても回復しない場合、休業補償給付だけでは不十分なケースが生じることがあります。このような状況を考慮して、傷病(補償)年金という、より包括的な補償制度が用意されています。ただし、傷病等級は重大な障害を示すものでもあり、一生涯にわたって影響を及ぼす可能性があります。労災保険だけでは心配な場合、雇用主は労災保険に加えて、労働者の不測の事態に備えた上乗せ保険に加入することを検討すべきです。また、雇用主には使用者賠償責任が求められることもあります。事業を守る観点からも、しっかりと準備をしておくことが大切です。


オープンリソース・アルケミストでは、お客様の経営実態に合わせた提案を行っております。リスク管理や労災対策に関する疑問や改善案について、お気軽にお問い合わせください。安心できる労働環境づくりをサポートいたします。



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